【ハッピールートを終わらせて】選択することの大切さを知る。本当のハッピールートを目指して【総評・感想/※ネタバレあり】

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この記事には一部ネタバレが含まれています。未プレイの方や内容を知りたくない方は、ブラウザバックをおすすめします。

今回取り上げるのは『ハッピールートを終わらせて』です。

簡単なあらすじ
選択肢が見える主人公・赤羽氷河は、ヒロインの神島亜由乃や後輩の天笠麗羅と何気ない日常を過ごしていた。

しかしある日、“偽選択”と呼ばれる異常な選択肢を選択してしまい、氷河の態度が豹変。亜由乃を殺してしまう。
彼女の死を回避するには“言霊”が必要だと知った氷河は、必死に言霊集めに奮闘するが、偽選択は増え続け、状況はますます絶望的になっていく。

それでも彼は諦めず、幾度もの選択を繰り返しながら、本当のハッピールートを目指していく。

では、『ハッピールートを終わらせて』のゲームレビューを本記事で解説していきます。

シア
10本目ね……ノベルゲームは私が担当するわ。
目次

概要

ジャンルタームリープ+メタフィクションノベルアドベンチャー
プラットフォームNintendo Switch / Nintendo Switch2
PlayStation5 / PlayStation4
Steam
開発元Water Phoenix
販売元KEMCO
発売日2025年10月2日
公式リンクhttps://www.kemco.jp/game/endingthehappyroute/ja/

総評

オススメ度:
シナリオ
キャラクター
グラフィック
UI・BGM

タイプリープとメタフィクションの演出を上手く活用し、丁寧に描いた作品。

  • 盛り上がるシナリオと文字の読みやすさ。
  • 細かい動きまで描写した、キャラクター達のイラストの多さ。
  • シーンにあったBGMの選択。

全体的見ても上手く仕上がってました。

特に良かったのは、魅力的なイラスト。キャラクターの良さをかなり引き出してました。

懸念点は3章の分岐のしつこさ、No Imageを多用しすぎといった部分です。

感想

プレイヤーの存在が主人公に知られているという独特な世界観。歪んだ選択肢を選んだときに起こる過剰な演出。そして、主人公の細やかな成長や、苦悩するキャラクターたちの描写。

それぞれが丁寧に描かれていて、心を掴まれる作品でした。

『ハッピールートを終わらせて』のここが面白い

ゲーム外のプレイヤー視点だけじゃない!ゲーム内のプレイヤー視点!?

一番に引き込まれたのが、プレイヤー視点がゲーム内にも存在していることでした。

通常、メタフィクション作品でのプレイヤー視点は“ゲームの外側”にしか存在しません。そのため主人公がプレイヤーの存在に気づくと、プレイヤー視点=主人公という構図になります。
しかしこの作品では、ゲーム内でもプレイヤー視点を持つキャラクターが存在するのです。

ゲーム内のプレイヤー視点は、ゲーム内のキャラクターとリンクしており、プレイヤーが選択した出来事がそのままゲーム内にも反映されます。
さらに、チャート一覧の確認も可能なため、ゲーム外のプレイヤーと同じように“やり直し”を行うことができます。

つまりこの作品では、プレイヤーの数だけ多次元世界が存在するそんな壮大で複雑な世界観が構築されているのです。

シア
……気づいたときには、もう物語の中にいた。そんな錯覚を覚えるほど、巧みに仕組まれた世界だったわ。

正しいルートに行くだけではない!?バットエンドの先も描くシナリオ

もう一つ面白さは、バッドエンドを“終わり”として描かないことです。

タイムリープ作品では、バッドエンドに到達すると直前の分岐に戻り、正しいルートを目指すのが一般的です。
しかしこの作品では、バッドエンドで“死”そのものに意味を考え、そのルートを作品の一部として成立させています。

序盤の氷河は、亜由乃を助けたいという気持ちで行動しています。
けれど終盤では、生きる意味や選択する意味を繊細に描き、悔いのない人生を送るようプレイヤーに訴えかけています。

そして、氷河か亜由乃のどちらかしか生き残れない状況でも、生きることの意味を明確に描くバッドエンドであっても、その先の物語を丁寧に描いているのが印象的でした。

今生きている現実こそが本物であり、やり直した先には幸せがあるとは限らない。
それが“ハッピールートを終わらせて”というタイトルの意味を体現する作品だと思います。

シア
……悲しみを受け入れることでしか、前へ進めない。そんな現実の強さと優しさを、この物語は静かに教えてくれたわ。

『ハッピールートを終わらせて』のここが印象的

偽選択肢を選んだ時のキャラクターの心理描写

この作品では偽の選択肢が存在しており、選んでしまうとキャラクターの自我が崩壊し、本来とは異なる言動を見せ始めます。その“自我崩壊”のシーンが繊細に描かれていて、非常に印象的でした。

抗えない心。言いたくないことを口にしてしまう恐怖。言葉を放ったあとの罪悪感と怒り。
一つひとつの言葉がプレイヤーの心をえぐり、心臓の鼓動を速めていく。

この鮮明な心理描写は、プレイヤーに痛みを与えながらも強く記憶にも残り、体験そのものを深く記憶に紐づけるような演出だと感じました。

シア
……心が壊れていく瞬間を、まるで自分のことのように感じてしまった。言葉がこんなにも鋭い凶器になるなんて、思わなかったわ。

キャラクターが見せるプレイヤーへの気持ち

普通のメタフィクション作品では、プレイヤーはほとんど認識されず、重要な場面でのみ認知されることが多い印象です。
しかしこの作品では、プレイヤーの存在が最初から知られており、キャラクターの距離感がよりリアルに感じられました。

自分の姿を見られるということは、常に誰かに監視されているということ。
普段は意識しない“プレイヤーの視線”を、ゲーム内のキャラクターに語らせることで、世界とのつながりがより近く感じられます。
そのため、この世界で起こる出来事はより深く心に残り、感情的にもなりやすくなります。

そして、主人公との一体感が強まることで、前に進む力の糧になる。
作品が終わった後には、より”強く生きよう”と感じられました。

シア
……見られることを恐れず、その視線さえも力に変えていく。その強さが、心の中に灯りをともしたわ。

主人公の細かい成長の変化とキャラクター達の向き合い

人生を諦めていた主人公・赤羽氷河が、ヒロイン・神島亜由乃の死を通して少しずつ変わっていく姿は、他の作品ではなかなか見られないものでした。

多くのタイムリープ作品では、記憶を継承して出来事を回避し、問題があれば戻って対処していくのが基本です。成長が描かれることもありますが、鮮明に表現されることは少ない印象です。
しかしこの作品では、氷河がタイムリープを経て、人としての成長を一歩ずつ積み重ねていく姿が丁寧に描かれていました。

最初は正しい選択肢を選び直すことだけが目的でしたが、キャラクターたちの死を経験するうちに、“死の在り方”や“選択の重さ”、そして“失敗する世界で生きる意味”を考えるようになります。
どんな結果になっても、キャラクターたちに悔いのない人生を歩ませようとする姿は、他の作品にはない深さを感じました。

また、仲間たちの悩みに真剣に向き合う姿も印象的です。
最初は目的のために他者を利用していた彼が、死の経験を通して“思いやる力”を身につけていく。キャラクターたちを支えたいという気持ちが、確かに成長の証として描かれていました。

そして何より、主人公を演じた声優・小林蓮雄さんの演技も素晴らしかったです。感情の揺れや成長が、声のトーンの変化にまで表れていて、氷河という人物の変化をより強く感じられました。

シア
……過去をやり直す物語なのに、前に進む勇気を描いていた。氷河の歩みは、“生きる”という言葉の意味をもう一度教えてくれたわ。

『ハッピールートを終わらせて』のここが不満点

恋愛ルートの分岐の多さとシナリオの長さ

この作品はメタフィクションとタイムリープを主軸に、シリアスな展開が大半を占めています。
しかし、3章では恋愛シナリオが中心となり、物語の雰囲気が大きく変わります。

最初は急なギャグ展開に驚きつつも楽しめましたが、進行するにつれて内容がやや冗長に感じられ、来歌のお葬式のシーン後までほとんどスキップもしてしまいました。正直読んでいて少し辛かったです。また、シナリオに分岐が多く、テンポが削がれてしまった印象もあります。

本編との温度差が大きい部分は、もう少し抑えた方がよりよい作品になると感じました。

変化がないイラストで進むシナリオ

3章でもう一つ気になったのが、「No image」と表示されたキャラクター画像のまま進行するシーンです。

ノベルゲームやアドベンチャーゲームでは、キャラクターの表情変化を楽しむことも大きな魅力のひとつです。
しかし第3章では、ほとんど画像が変化しないまま物語が進むため、登場人物の感情の動きが伝わりづらく、物語のテンポも損なわれていました。

「No image」という演出自体は印象的ではありますが、多用されすぎたことで逆に、作品全体の没入感と面白さを下げてしまっている印象を受けました。

このイラストでずっと話が進む。

イラストとオブジェクトの雑な配置

時々、イラストやオブジェクトの配置がやや雑に感じられる場面があり、少し残念でした。

印象に残らないシーンであっても、雑に配置されてしまうと全体の印象が下がってしまいます。もう少し丁寧に配置していたら、よりよい作品になったと思います。

机?と感じられなくもないけど、雑
対話するシーンをだと思うが、オブジェクトを配置しただけ

終わりに

『ハッピールートを終わらせて』は、今までにないメタフィクションを体験したい人におすすめの作品です。
ただし、辛い言葉や過激な描写も多いため、人によっては少し重く感じるかもしれません。

それでも、人生にとって大切なものを教えてくれる作品だ思います。心にくる作品は心の芯の強さにもなりますよ。

シア
……現実と虚構の境界を越えながらも、最後に残るのは“生きる意味”。構造の中に温度を感じる作品だった。
蛍火
ではまた。
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